朝日ラバーグループは、持続的な未来の実現のためには地球環境に配慮した事業活動が必須と考え、温暖化対策をはじめ、循環型社会の形成に向けた廃棄物削減、化学物質の適正な管理に取り組んでいます。
2022年度に自家消費した太陽光発電量は、約97万kWhで全工場の使用総電力の11.9%となりました。隣接する白河工場、白河第二工場(下写真)では、太陽光発電パネルを屋根に設置し、2工場を合わせた使用電力の24.5%を賄いました。
省エネ活動としては、設備電源を中心とした不使用時の停止、工場エア用のコンプレッサー吐出圧見直し、エア使用設備運転停止時のエアバルブの閉止、設備の断熱化推進によるヒーター電力削減と周囲温度の上昇抑制によるエアコン電力低減、加湿設備や給排気設備のメンテナンスによる効率の維持のほか、電力の見える化によるムダの発見と運用改善を中心とした活動を進めました。
また、前年度に続き、省エネパトロール、省エネ標語の募集、省エネ改善提案のキャンペーンなどの意識向上活動を実施しました。
これらの電力削減対策と受注減少の背景もあり、太陽光発電を除く購入電力使用量は、前年比0.3%の減少となりました。こうした取り組みの成果として、資源エネルギー庁が行う事業者クラス分け評価制度において、2019年度からSクラスの評価を得ています。
■電力使用量の推移
当社から排出されるCO2の約9割は電力に起因していました。電力起因のCO2を削減するため、段階的に自家消費用の太陽光発電設備を設置しています。
また、全工場において、外部からの購入電力はすべて再生可能エネルギー起因の電力(水力発電および地熱発電による属性のある非化石証書付電力)を使用しています。これにより、工場部門でのエネルギー消費によるCO2の発生は、ボイラー燃焼時に発生するものだけになります。
蒸気配管の断熱や排熱の利用、電気エネルギーとの組み合わせなどでエネルギーの効率的な使用を検討するとともに、今後も再生可能エネルギーを利用した生産活動を推進していきます。
2023年度から、GHGプロトコルに基づくスコープ1、2、3の算定を進めます。
■CO2排出量の推移
灯油は、医療製品の工程で使用する温水を作るために使用しています。該当する製品の生産数量により使用量は増減しますが、ボイラーからの蒸気熱を水に伝える熱交換機や配管部分からの蒸気漏れ、保温材の劣化などの設備状態、ボイラーの燃料を効率的に使う運用面の管理が重要です。
また、品質不良による再生産ロスを少なくしていくことも重要な取り組みになります。2022年度は蒸気熱のロスを改善する取り組みに重点を置いた活動に加え、これまでの品質不具合によるロス低減に取り組みました。
生産量が前年度比11.5%増加しましたが、これらの対応を背景として灯油使用量は6.2%の増加で抑えられました。
■灯油使用量の推移
廃棄物重量の4割強を占めるゴム系廃棄物は、ゴム成形の性質上、金型キャビティからはみ出す余分な材料(バリ)が必要となるため、生産量に対して一定割合で発生する性質があります。
また、ゴムは一度、加硫反応させると元の材料に戻すことができません。そのため、生産量の増加は廃棄物の増加という関係になります。その前提の上に不良品などのロスによる廃棄物が上乗せされることから、これらのロスを減らす活動に取り組んできました。バリの少ない金型設計による廃棄物削減に加え、バリの再資源化に対する活動にも取り組んでいきます。
■廃棄物総排出量と前年度比の推移
年度 | 廃棄物(t) | 前年度比(%) |
---|---|---|
2018 | 295.0 | 92.5 |
2019 | 296.0 | 100.3 |
2020 | 244.1 | 82.5 |
2021 | 260.3 | 106.6 |
2022 | 302.4 | 116.2 |
■廃棄物の種類(2022年度)
種類 | 排出量(t) |
---|---|
ゴム屑 | 139.5 |
シリコーンゴム | 34.9 |
ポリシートを含む廃プラスチック | 67.2 |
汚泥 | 11.7 |
排紙 | 19.6 |
可燃物 | 16.0 |
木製パレット | 9.2 |
その他 | 4.3 |
■廃棄物総排出量
ゴムやポリシート、木製パレットはRPFなどの燃料、硬質プラスチックや樹脂製廃ブラスト、廃ウエスなどは焼却後の灰を路盤材、一部のゴムや古紙類は再生原料に利用しています。これまで開拓したリサイクルルートにより、2022年度の一般廃棄物を含む全廃棄物に対するリサイクル率は前年度とほぼ同じ92.1%となり、90%以上を継続しています。
■リサイクル量およびリサイクル率の推移
水の主要用途は、ゴム製品の処理や洗浄になります。工程のトラブルが使用量に影響するため、品質不良による再生産を予防する活動を継続しています。また、敷地内の水道配管は地下に埋設されている範囲が大きいため、水道配管の劣化や冬季の凍結による水道管破裂による漏水ロスを少なくすることも大切です。異常の早期発見と処置のため、水使用量の定期チェックによる異常の確認を行っています。2022年度は、前年度減少した医療用製品が増加に転じたことから、処理や洗浄による水の使用量は前年度比5.0%増加しました。
■水使用量の推移
当社の主力商品だったASA COLOR ランプキャップ中に含まれる不純物を取り除くため、当社では過去にトリクロロエチレンを使用していました。このトリクロロエチレンが地下に浸透していることがわかり、1996年から土壌ガス吸引浄化装置による土壌浄化、2004年から地下水揚水浄化装置による浄化を行ってきました。
2012年からは、微生物分解による土壌浄化の可能性についての調査を開始し、効果確認のため、微生物を活性化させる薬剤を投入する試験を行ってきました。
地下30mの酸性土壌という不利な条件のもと、なかなか効果が確認できませんでしたが、これまでの結果から少しずつ分解反応が進んでいることがわかってきました。
2022年度も土壌中で徐々に消費される薬剤を補充するとともに地下水の汚染状態のモニタリング行い、結果を地元自治体である福島県に報告しながら、浄化の進行を確認してきました。また、土壌中にわずかに残留している汚染物質により地下水が再汚染される可能性をなくすため、2021年度に計画した汚染物質をガスとして吸引する浄化を行いました。
トリクロロエチレンの濃度は、まだ地下水基準値より高い状態ですが、低下の傾向が続いています。今後も継続した浄化活動を進めます。
製造工程中には、ゴム製品そのものや設備の清掃、製品の洗浄や処理用など、様々な化学物質があります。化学物質には、PRTR法などの国内法令やRoHS、REACH他の海外規制があり、当社では、これらの法規制の改正情報の収集やお客様からの含有情報の問い合せに対応しています。
工程中で使用する有機溶剤や設備作動油などの化学物質も有害性、危険性の低いものへの代替を進めています。酸やアルカリなどの毒劇物、可燃性の配合薬品などの危険物は、安全に取り扱うための安全データシート(SDS)や局所排気装置を整備するとともにリスクアセスメントを実施し、より安全で衛生的な職場環境を目指して改善を進めています。