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優れた特性で用途が広がる透明樹脂とは?

 TOP製品情報優れた特性で用途が広がる透明樹脂とは?

透明樹脂といえば、主に工業製品のプラスチックパーツや自動車のヘッドライトカバーなど様々な分野で活躍している材料です。
しかし昨今の技術革新に伴って、用途に応じた特性を持つ高機能樹脂が次々に開発されています。
ここでは主な透明樹脂の種類を取り上げ、それぞれの特性を解説していきます。また問題点などを含めて、今後どのような透明樹脂材料が求められているのかについて焦点を当てていきましょう。

透明樹脂はどのような材料?

一口に透明樹脂といっても千差万別です。硬くて割れやすいものもあれば、柔らかくて破損に強い素材もあるのです。
もちろん製造法や、使用目的も違ってくるため、より最適な材料を選ぶことが大切です。

透明樹脂の特性とは?

まずは透明樹脂の特性について解説していきたいと思います。従来の無機ガラス等と比較して、様々な面でメリット性の高いことがポイントとなります。

透過性が高い

透明樹脂の特徴として、透過性の高さが挙げられます。
光が物体に当たると表面で反射しますし、内部に侵入したとしても物体に吸収されます。いっぽう内部で散乱して裏面から出ていく光もあります。
裏面から出ていく光のことを「透過光」と呼びますが、その割合が高いほど透過性が良いということになります。
一般的な無機ガラスの場合、その透過率は約90%とされていますが、90%以上の数値を持つ透明樹脂も存在しています。

軽くて衝撃に強い

また無機ガラス等と比較して、軽くて衝撃に強いというメリットも挙げられます。
透過性が高いうえに衝撃や摩耗に強く、吸水や熱などによる変形が少ないという優れた点があります。
ただしフィルムや食品容器・包装部材として透明樹脂が使用される面もあり、ポリスチレンやPETといった素材はコストが安い反面、耐衝撃性が高いというわけではありません。

劣化しにくい

気候の変化に対する耐性を「耐候性」と呼びますが、透明樹脂の場合、耐候性の高い素材が多いというのが大きなメリットとなります。
「太陽の紫外線」「温度変化」「酸化反応」に強いということなのですが、自動車のヘッドランプカバーやレンズ、電飾サインなど、透明樹脂は屋外で使用されるケースも多く、そのぶん劣化に強い特性が求められているのです。

成形しやすく汎用性が高い

成形しやすく、加工性も高いことが透明樹脂の特徴でもあります。
射出成形や押出成形、真空成形やブロー成形など、プラスチックの基本成形法のほとんどに対応しています。
そのため従来の無機ガラスでは難しかった様々な形状に成形・加工することも可能なのです。

透明樹脂の主な種類とは?

それでは具体的に、どのような透明樹脂の種類があるのでしょうか。工業製品などに用いられる5種類に絞って解説していきましょう。

PMMA(アクリル樹脂)

透明樹脂の中で最も高い透過性を持つのがアクリル樹脂です。水族館の巨大水槽にも用いられている素材で、高い水圧にも耐えられる耐久性と、優れた耐衝撃性を持っているのです。
また無機ガラスよりも高い透過性(約92%)を持つため、光学レンズなどにも使用されています。
ただし切削性が高いぶん、表面に傷がつきやすいというところが欠点です。最近では表面にシリコーンを薄く塗布することによって、欠点がカバーされつつあります。
また他のプラスチックと比較しても、製造コストが安いというのが大きなメリットとなっています。

PC(ポリカーボネート)

透過性については無機ガラスに劣りますが、アクリル樹脂の200倍という優れた耐衝撃性を持っており、防弾シールドとして利用されるほどです。
また耐熱・耐寒性も強く、-100~130℃の環境下でも使用することができますし、耐酸性にも優れているため、主に屋外環境で適性を発揮します。
いっぽうアルカリに対してはあまり強くなく、アルカリ性洗剤や界面活性剤を塗布すると、ひび割れや変形を起こすことがあります。
用途としてはメガネレンズや光ファイバー、スマートフォンのカメラレンズなど、私たちの生活に密着した製品で多く用いられています。

PS(ポリスチレン樹脂)

ポリスチレンは原油・ナフサなどを原料として作られる樹脂のことですが、無機ガラスに匹敵する透過性を持ち、様々な素材として用いられています。
透明材料としてはCDケースや液晶拡散板、包装材料などに多く使用され、コストが安く大量生産に向いています。また非常に軽量のため扱いやすいというメリットがあります。
いっぽうデメリットとしては、熱に弱く、耐衝撃性も低いこと。また油や薬品に対して溶けやすいという性質があるため、使用用途がどうしても限定されてしまいます。

AS樹脂

無機ガラスに匹敵する透過性を持ち、ポリスチレンの欠点である耐熱性・耐薬品性を改良した素材です。
またガラス繊維と組み合わせて耐衝撃性を高めたエンジニアリングプラスチック(エンプラ)としても利用され、安全性が求められる基幹部品として注目されています。
ただし耐候性は高くはなく、直射日光に長時間晒されると劣化しますし、燃えやすいという欠点があります。

シリコーン樹脂

シリコーンはケイ石と有機化合物を用いて、化合反応を繰り返しながら生成されます。「魔法の砂」と呼ばれるほど優れた特性を持った素材です。
耐久性と耐候性に極めて優れており、-70~150℃の環境下でも物性変化はありませんし、紫外線に長時間晒されても特性を失うことはありません。
耐衝撃性に優れ、透過性もアクリル樹脂並みにあるため、その用途は多岐にわたります。光学デバイスやLEDレンズといった光学部品、インテリア・ゴーグル・アクセサリーといった生活用品としても利用され、ガラスやアクリルに変わる素材として注目されています。
またシリコーンは柔らかいゴム素材だと言えますが、硬化剤を混ぜることで硬くなるのです。
唯一の欠点としては可燃性という点があるのですが、製造過程で難燃剤を微量添加することで、自己消炎性を付与することができます。

拡大していく透明樹脂の応用分野

透明樹脂は様々な用途として活用されています。身近にある包装資材や電子部品などもさることながら、工業の技術革新に伴って分野を問わず注目されているのです。

光学材料としての透明樹脂

高透明材料としてはガラスを連想するのが一般的なのですが、樹脂分野の研究開発や技術革新によって、今や置き換わりつつあるのです。
ここでは躍進著しい光学材料としての透明樹脂を見ていきましょう。

プラスチック製レンズ

レンズをはじめとした光学用部品については、やはり透過性や耐衝撃性が高いアクリル樹脂にアドバンテージがあるようです。
また成形時における歪みなどがほとんどないため、屈折率の変化が最も小さいと言えるでしょう。
ただしアクリルは吸水性が若干高いため、湿度環境の変化によって屈折率が高くなる可能性があるのです。これが高精度用途へ応用するための障壁となっています。
この点については、吸湿性の低い脂環式ポリオレフィン樹脂の開発などによってクリアされているようです。
またアクリル樹脂の透過性は高いものの、近赤外領域の波長を吸収しやすいという欠点があります。分子構造を変えることによって改良は可能ですが、製造コストが上がるなどのデメリットが出てくるでしょう。

ディスプレイ関連

AS樹脂やABS樹脂は、透過性はさほど高くないものの、優れた耐久性(傷がつきにくい・引っ張り強度がある)によってディスプレイシートなどに利用されています。
また柔軟性も兼ね備えているため、包装用シートとしても活用されています。軽量かつ成形性も良いのでコストが非常に安いというのがメリットとなるでしょうか。

LEDモジュールなどの材料

照明用パーツに使われる透明樹脂として、アクリルやポリカーボネートなどが一般化していますが、第3の素材としてシリコーンが注目されています。
特に液状シリコーンは成形中の樹脂流動もスムーズですし、部材の肉薄な部分や小さな空間にも均一に充填できるのです。
またその特性を生かした光学設計も容易だと言えるでしょう。硬い透明樹脂と比較すればゴムのような弾性を持っていますし、そのぶん微細な設計が可能なのです。
またシリコーンの特性上、離型(型抜き)も容易ですから、部品の様々な形状に対しても対応できるのです。

透明樹脂の問題点とは?

使用用途が広くメリットの大きい透明樹脂ですが、種類ごとにデメリットも存在します。
「プラスチックの女王」と呼ばれ、大きな欠点の見当たらないアクリル樹脂は燃えやすく、摩擦力に弱いとされています。
その他の透明樹脂素材にしても、衝撃に弱かったり、耐熱性に難があったり、紫外線で劣化しやすいなど、何かしら欠点はあるものなのです。

耐性を備えた透明樹脂材料とは?

ここまで列挙した透明樹脂の特性や長所、あるいは欠点について、最も耐性を備えた素材とは何か?を突き詰めていくと、シリコーンが挙げられます。
よく「シリコン」という表現の仕方もあるのですが、シリコンとはあくまで原料としてのケイ石のことです。化学反応を繰り返し、製品化された素材が初めてシリコーンと呼ばれるのです。
他の透明樹脂と比較してもこれといった欠点が見当たらず、かつコストもさほど高くはないという優位性を持ち合わせています。
シリコーンはまさに次世代の透明樹脂材料という見方もできるのではないでしょうか。

まとめ

朝日ラバー製「ASA COLOR LENS」は、LED照明をはじめとした光学製品への汎用性が高く、シリコーン素材ならではの、用途に合わせた形状提案や価格提案が可能です。
またシリコーンは柔軟性も持ち合わせる素材ですから、自由な光学設計が思いのままという利点も見逃せません。
従来の無機ガラスや、硬い透明樹脂では叶わなかった特殊な形状にも対応していますし、95.4%という高い透過性を持ち、近赤外領域の波長を透過するため、アクリル樹脂をしのぐメリットがあるのです。
また耐久性に関しては、耐紫外線、耐衝撃、耐熱、耐薬品などの面で大きな優位性があり、どのような環境下においても優れた特性を発揮します。